杉山 登志郎『発達障害の子どもたち』を読んで
突然ですが、本の感想を書きたいと思います。
発達障害という精神疾患は一昔前と比べて格段に知名度が増しているのが現状だと思います。
しかしADHD(注意欠如、多動症)とASD(自閉症スペクトラム)の違いを理解している人はどれだけいるでしょうか?おそらく医療従事者を除いてはほとんどいないと思います。
そこで発達障害について正しく理解するにはどうすればいいだろうか?と思っている人に個人的におすすめしたいのがこの『発達障害の子どもたち』です。
この本は専門医の視点から発達障害の当事者の幼少期から成人までの症例を紹介しながら、どのようにして関わればいいのかを具体的に述べてくれています。
特に幼少期の教育について重点を置いているので、教育者や当事者の親御さんにはぜひ読んでいただきたい本です。
印象に残ったところ
発達障害についての誤解
発達障害の子どもも通常学級で普通の教育を受けた方が、良い影響があるという意見は今でもありますが、これは間違いであると著者は言っています。
まずは授業に参加できるかどうかが大事で、無理に通常学級に入れても参加できないようでは学童期を無駄に過ごしてしまい、本人にとっても気の毒であると述べています。
例えば仕事などで自分がまったく参加できない会議や外国語のみの話し合いなどを想像するとわかりやすいかもしれません。このような時間はとにかく苦痛であり、これが幼少期に毎日続くとなると相当きついと思います。
なので本人の能力に合わせて教育を行うことが重要であり、そういう意味では個別な対応ができる特別支援クラスを著者は勧めています。
通常学級から特殊学級へというのはよくない
通常学級でダメなら特殊学級へ移行するという体験は子どもにとっては大きな挫折であり、自尊心を傷つけてしまいます。
幼少期にこのような大きな挫折体験をさせるべきではないと著者は言います。
ちなみに僕は通常学級に通い、高校もごく平均的なとこに通っていましたが、やはり多感な時期にした嫌な体験というのはなかなか拭えないものです。
特別支援教育について
著者は本人の知的な能力に合わせて、学校やクラスを選ぶのが重要だと述べていますが、学校によって大きな差があり、中には非常識な発言をする管理職がいたり、特別支援教育についてまったく無知な教師が特別支援クラスを担当していたりする最悪なケースもかなりあるようです。
実際、僕が親に聞いた話では僕が通っていた小学校の特別支援クラスでは名前の書き順すら教えずに授業なども一切行わないひどい教師が担当していたらしいです。
そこで著者は教育全体を見直し、きちんと子供をサポートするシステムが必要だと述べています。
僕もこれには大いに賛同したい心持ちでした。
最後に
発達障害というのはいわば見えない障害なので、誤解や偏見を受けることが多いと思います。
それゆえに一般社会でやっていくにはなかなか大変だったりします。
この本はそういった現実を専門医の視点から書いているので、とてもおすすめです。